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第28回は、AO義塾代々木キャンプから上智大学総合グローバル学部総合グローバル学科推薦入学試験(公募制)に合格したAO義塾9期生・渡邊真由子さん(日本女子大学附属高等学校)の課題レポートです!
【課題レポート】
私は父の仕事の関係で6年間を過ごしたエジプト・カイロで、私と年の変わらない女の子が必死に物乞いをする姿を目の当たりにし、何故平等でないか疑問に感じ、貧困問題に関心を持つようになった。従って、本レポートではグローバル・イシューとしてアフリカの貧困問題を取り上げたい。
世界銀行は国際貧困ラインとして1日1.95㌦以下で暮らす人々を「極度の貧困層」と規定している。MDGsで世界の貧困率を2015年までに1990年比で半減させることが取り組まれた結果、1990年の約36%(約19億人)が2015年には約12%(約8.4億人)と3分の1に減少し、目標は達成したとされている。しかし、これは中国やインドの急成長に因るところが大きく、アフリカの貧困者数はあまり減少していないのが実態である。今なお、アフリカでは人口の41%が極度の貧困状態にあり、世界の貧困者の3分の1以上がアフリカにおり、アフリカの貧困問題は地球の貧困問題でもあると言える。また、貧困問題は教育や医療・福祉等、様々な問題と相互に関係しているが、SDGsにより、シナジー効果が得られるよう、夫々の問題を連動させて取り組む枠組みが実現し、正に地球規模で取り組まれている。
アフリカの貧困問題の原因は多岐に亘るが、原因の殆どは奴隷貿易と植民地化が生み出したものと言われている。民族的・宗教的対立、汚職と腐敗、旧宗主国の資源の利権争いによる混乱等、枚挙にいとまがない。一方、貧困問題の解決に貢献すべき開発援助が、ミクロとマクロのパラドックスと称されるように、短期的即効性があっても、持続可能な長期の便益をもたらしていないと指摘されている例もある。更には、開発援助によって、現地の持続的成長の機会を摘んでしまう可能性があるとも指摘されている。このように、アフリカの貧困問題の理解と解決の為には、複眼的な視座、即ちローカルの視点とグローバルの視点が不可欠と考える。
ローカルな視点とグローバルな視点のいずれも顧みられなかったために、貧困問題を悪化させた例を、「資源の呪い」とも「開発なき成長」とも言われる事例を基に説明したい。
「資源の呪い」とは、外国資本等による資源開発で経済成長はするが、富は先進国とその国の特権階級に集中し貧困層には還元されず、貧困問題が更に深刻化する状況を言う。国は成長しているにも拘らず、貧困層には富は配分されず、教育も保健医療も提供されず、更には、天然資源への依存により、他の産業が育たず持続的成長に繋がらないのである。例えば、最貧国だった赤道ギニアは、石油の恩恵で高成長を遂げ、平均国民所得は2万㌦に達したが、国民の4分の3は「極度の貧困層」であり、国民平均寿命は約51歳、平均教育年数は5.4年という低水準であり、世界で最も格差がある国となっている。
この問題は、ローカルの視点が欠如していたことにより貧困が深刻化したこと、他方、持続的成長に向けたグローバルな視点からの施策がなかったことで、モノカルチャー化に陥ったということを示している。
一方、ローカルとグローバルの視点の双方を踏まえ実施されたことで成功した具体例として、エジプト・日本学校について説明したい。これは両国首脳間で合意されたエジプト・日本教育パートナーシップに基づき、教育支援のソフト面と校舎建設のハード面の支援が日本のODAで実施されたものである。
この支援が成功している要因は、先ず両国首脳がパ-トナーシップとして合意したことで、支援の優先度が明確にされたことが挙げられる。その上で、両国がパートナーの立場で、日本式教育について、日直や学級会等の特別活動や教員教育等に関し、エジプトの視点も考慮しながら協議したことも挙げられる。
このエジプト・日本学校は貧困他様々な問題を解決に導く質の高い人材を育成する場として期待されており、2016年の開校以来、現在は35校が開校され、2021年までに200校が開校することが決定している。また、エデュケーション2.0と呼ばれる教育改革の一環として、この日本式教育を全国規模で導入することを決定し、エジプトで高い評価を得ている。この支援は、アフリカの貧困問題の解決を考え得る上で示唆に富む実例の一つと言える。
以上のように、アフリカの貧困問題の理解と解決においては、ローカルとグローバルの視点のいずれが欠けても、真の問題解決とはならず、複眼的な視座を持つことで、初めて効果のある、そして持続的な貧困問題の解決策に繋がると考える。また、その為の国際協力体制の構築も重要である。JICAは開発金融・無償資金・民間連携等包括的な支援が可能でありNGOとの連携を更に強化すれば、ローカルとグローバル両方の視点からの支援が可能となると考える。その上で、日本が世界銀行と連携を更に進めれば、より広い地域で、より広範な分野に対し、よりきめ細かい支援が可能となると考える。更に、アフリカ連合の機能強化も、持続的成長のために重要と考える。
このように、アフリカ問題の理解と解決のためには、ローカルとグローバル両方の視点が不可欠であり、それを支える国際協力体制の構築が実現すれば、アフリカの貧困問題の解決に向けた大きな一歩となるはずである。
【参考文献・URL】
- 国谷裕子(2019年)『国谷裕子と考えるSDGsがわかる本』 文溪堂
- 蟹江憲史(2017年)『持続可能な開発目標とは何か』 ミネルヴァ書房
- ダンビサ・モヨ(2010年)『援助じゃアフリカは発展しない』 東洋経済新報社
- 戸田真紀子(2008年)『アフリカと政治-紛争と貧困とジェンダー-』 お茶の水書房
- 平野克己(2009年)『アフリカ問題-開発と援助の世界史-』 日本評論社
- 国際協力機構ホームページ『エジプト・日本学校』
https://www.jica.go.jp/press/2018/20181004_01.html - 紀谷昌彦・山形辰史(2019年)『私たちが国際協力する理由』 日本評論社
以上
次回は、渡邊さんの自己推薦書です!
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