解答速報!慶應義塾大学総合政策学部「小論文」2017
問1
因果関係はある事象Aが起こることで、事象Bが生じるという2つの事象が順序関係を持って生じる関係を指す。一方で相関関係は事象Aと事象Bの関係は認めつつも、その順序関係までは明らかにしないという違いがある。相関関係から因果関係に迫るには、まず事象間の順序関係を明確にする必要がある。その為に、まず見せかけの相関関係でないことを明らかにする為に潜在変数の検証を行わなければならない。次に事象Aが起こることで事象Bが起こるという再現性を検証することが必要である。これらは統計的手法を用いることや、原因構造の把握によって検証を行う。これらを行うことで、相関関係から因果関係に迫ることができると考える。
問2
問3
今回、糖尿病の直接の因果関係として糖尿病の原因となる遺伝子の保有割合、そして生活習慣の意識の高低であると考えた。また平均年収と生活習慣への意識は相関関係であるとし、糖尿病死亡率と平均年収は相関関係にあると分析をした。
まず糖尿病の直接の因果関係に関して論述したい。糖尿病を引き起こす遺伝子をどの程度持っているのかが直接糖尿病を引き起こす因果関係になると考えた。次に生活習慣の高低に関しては、これらが高いことで肥満の割合が減る、運動量が増えるといった事象が起きる為、糖尿病死亡率とは因果関係になると考察をした。
次に平均年収と生活習慣への意識の相関関係に関して考察をしたい。平均年収が上がることで、より健康の為の投資を行えたり、健康であるが故に長時間働くことができるといった関係があると考察をした。従って、ここではこれらは因果関係ではなく、相関関係があるのではないかと考えた。
糖尿病死亡率と平均年収の間には潜在変数として生活習慣の高低をあげることができ、これら生活習慣の高低が一般に糖尿病の原因と言われる肥満や運動不足と相関があるのではないかと考察をした。従って、問2で書いたような構造になる。
【講評】
今回の2017年総合政策学部の問題は、近年傾向の続くデータの読み取りから一歩踏み込み、そのデータを構成する因果関係と相関関係の関係を読み解き、与えられたデータから因果関係と相関関係を見抜く問題となった。昨年度に比べれば、問題文・設問ともに難易度が下がったとみて良いだろう。設問で求められている要求、答え方が明確なものとなっており、問題文に関しても、因果・相関関係の具体的な説明が文中に示されていると言っても過言ではなかった。文章の難易度についても、平易で読みやすいものであった。
また、問題のアプローチとしては、問題発見・解決力を問うものではなく、そこから一歩進んだ、問題分析力が問われるものであり、SFCの小論文を重点的に対策していた学生は戸惑った部分もあるかもしれない。しかし、因果関係、相関関係を理解した上であれば、これまでSFCが重視してきた問題発見・解決力を見るような問題と非常に似たアプローチで問題に取り組むことができるこれらを踏まえると全体として易化と評価できるのではないだろうか。
現在SFCではデータサイエンス科目が必修となっており、全ての学生が数学の科目が大半を占めるデータサイエンス1と、実際にデータの解析までを行うデータサイエンス2の授業を履修することとなっている。このような現状からも、問題発見・解決といったSFCの基本姿勢を支える問題分析能力が、近年問われている。社会問題の問題点を捉え、これまでは問題発見・解決に着眼点を置いて対策を行う受験生も多かったと考えらえるが、今後はそこから一歩踏み込んだ対策が必要になるであろう。